みーぽんBLOG from カリフォルニア
カリフォルニアから時事、政治、環境、日米比較などランダムに綴ります
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ロンボルグをめぐる経済界と科学者の対立
最近「ビョルン・ロンボルグ」というデンマークの学者を知りました。ロンボルグは"Skeptical Environmentalist"という本を出して、最近の環境保護論者が煽る環境危機は誇張されたものであり、実際地球環境はそれほど悪化しているわけではない、と言っている人です。

この人はエコノミスト誌やビジネス・ウィークリー、そしてウォールストリートジャーナルといったビジネスメディアからは大絶賛を受け、かたやネイチャー、サイエンティフィック・アメリカンといった科学雑誌では酷評を受けという、極端な論議を巻き起こしているcontroversialな人物のようです。


ロンボルグ本人のウェブサイト、批判サイト、書評、書評に対する反論、その反論への再反論、と一通り読んでみました。本そのものを読んだわけではないので、あくまで表層をなぞったのに過ぎませんが、そこから得た印象はこういうものでした。

1.環境問題はグローバルな課題の中のひとつであって、途上国の医療問題などほかにも緊急で重要な課題はある、という指摘は正しいが、環境問題の深刻さを矮小化するための、統計数字やグラフの意図的、恣意的な示し方やデータの歪曲をしていると多くの科学者に指摘されている。

2.科学雑誌との応酬を見ていると、ロンボルグの主張自体に問題がある、というよりは論議の持って行き方に無理があるということのようだ。数十年も環境に関わっている専門の科学者でさえ、事実と仮説、推論の違いに注意して論文を作成しているのに、ロンボルグの言い方は「環境問題はそれほど危機的な問題ではない」という結論ありきで、断定的にすぎると指摘されている。

3.グリーンピースに募金をしたことがあるだけで「メンバーだった」と言い、グリーンピースから「メンバーだったことは無い」と指摘された。環境論者でないにも関わらず「左翼の環境論者だった自分」かのように誇張したといわれても仕方がない気がする。


そんななか、たまにチェックしている田中宇さんのページを見たら、「温暖化のエセ科学」という扇情的なタイトルで、その中に「デンマークの著名な学者であるロンボルグ」が、IPCCの第4次評価報告書の要約に対してコメントしたとして、海水面の上昇のレベルも以前に言われたほどひどくない、したがって温暖化にまつわる論議自体懐疑されるべきである、という論調になっていました。

くだんの報告書の要約なんて日本の環境省のウェブをさっと斜め読みするだけでも、ロンボルグのコメントが変だってわかるのに、田中さんともあろう人がなんでこんないい加減な書き方をするんだろう?

ここらへんは尊敬するAquarianさまなどがしっかり論評を加えてくださっているので、わたしはあまり立ち入らないことにします。

わたしがなぜ興味を持ったかというと、この人自体に対する興味、というより、エコノミストやWSJといった経済界の御用メディアはこの人をすごく持ち上げ、ダボス会議とかでも注目の人として取り上げられる一方で、科学者や環境問題の専門家からは批判も強烈だった、という極端な分かれ方はなぜだろう、と思ったからなのです。

そもそも石油業界などからの圧力でアメリカが京都議定書に参加しなかったことでもわかるように、産業界の中でも「反温暖化」キャンペーンを張りたいと思っていた。おおっぴらにやると嫌われるけれど、ロンボルグが彗星のように現れたことで、あたかも「科学的に温暖化は危機でないと証明している」かのような本を書いた彼をおみこしで担ぐことにしたのでしょう。

ただ今回のIPCCの報告書でさしものブッシュもアル・ゴアをほめ始めたり、温暖化の問題をとうとう認め始めました。それはたとえばGEのような今までは石油に依存していた企業が風力発電をどんどん作り始めたり、グーグルが電動のスポーツカーの会社に投資していたり、温暖化が経済の成長力を弱めることを心配していた経済人も、脱石油で持続的な経済成長を目指そうという方向でまとまってきた印象があります。

今年のダボス会議でも温暖化がもっともビジネスにとっても大きな影響だという論調だったようです。数年前にロンボルグが持ち上げられていたときとは大違いです。

伝統的な経済学はあくまで市場を中心に問題を考えますから、市場の外にある、気候変動が生み出しうる(大きいかもしれないし小さいかもしれない)リスクに取り組むより、今現在の経済の活力を取り扱うほうがやりやすいに決まっているのです。だからリスクの予測に対してあまりに幅があった時点では、ロンボルグに対する態度に見られるように、「財界&経済学者」対「環境論者&科学者」の対立がめだったかもしれません。

でもカトリーナの被害が出たり、IPCCの報告書が「温暖化が人為的なものであるという可能性は90%以上」と述べたり、不確実性の高かったリスクがかなり目に見えるものになってきた今や、両者が対立するのではなく協力する体制になってきたように思われます。










スポンサーサイト

テーマ:環境・資源・エネルギー - ジャンル:政治・経済

この記事に対するコメント
私は逆な印象を持っています。
こんにちは。ハイブリッド汽車に興味を持つような人間なのに、と意外に感じられますでしょうけど、コメントをば。

田中サンのとっている態度で一つだけ間違いないことがあります。
「今回のIPCCの報告書では内容が不完全すぎるから、5月の正式報告を見るまでは、根拠薄弱と言われても仕方がない」

私自身はリンク先に書いているような理由で、CO2自体の温室効果には否定的(少なくともオーバーに言い過ぎ)という立場なのですが、
その立場を離れても、今回のIPCCの発表では、「説明する気があるのか?」と思ってしまうほど両者の因果関係の説明を省略して、そのくせ関係有りと断言しているのだから、「不誠実」といいたくなります。
……これでは、「背後の政治的圧力」を勘ぐられても仕方がない、と思うのです。

すべては5月にわかることではあるのですが……。

むしろ本質は、訳のわからない用途での資源の浪費(ライトアップとか、レジ袋とか、日本国内で飛行機を使っていることとか)による資源枯渇や燃焼後に出るNOx->酸性雨にあるのでは?
その化石燃料の過剰な使用にブレーキを掛ける指標としては、CO2排出量は役立つでしょうけれども。

また、この問題、
>経済学者と科学者
の対立と見るのは、どうも違う気がするのです。科学者でも、物性物理学(特に理論系)や化学をやった人には、温室効果に懐疑的な人がかなりいます。というのは、彼等が知っている「分子としてのCO2の性質」と、温室効果を見積もるときに使われる「CO2の物性パラメータ」とがかなりかけ離れているからです。
一方、CO2排出削減対策が産業になってきたここ5年ほどは、少なからぬ経済学者・経営学者が積極的になっていて、当の気象学者が「まだ断言はできないのに……」と呼び腰になっていたのをきっつく批判していたというのも、一面事実ですよね。

それから、ロンボルグって方、失礼な言い方をしてしまいますが、懐疑派の中でも余り知られていない人です(苦笑)。懐疑派の人間として、「こういう騒ぎ方は困るんだよな(いらん先入観を与えてしまうやん)~」と、苦笑いが止りません。
【2007/03/09 01:57】 URL | デルタ #JnoDGgPo [ 編集]

デルタ様
コメントありがとうございます。わたしも「5月の正式な報告書がでるまでは」に関しては全面的に賛成です。デルタさんのように、科学の専門家の人にコメントしていただけるのは光栄です。

私自身も最近になって経済界のほうがやたら積極的になっていることを憂慮しています。その「ねじれ」のひとつは、「バイオエタノール」のために、まだ排出規制が課されない途上国の熱帯雨林が伐採される、という本末転倒でしょうか。

お恥ずかしながら、科学の知識がない私には分子としてのCO2の性質」と、温室効果を見積もるときに使われる「CO2の物性パラメータ」 とおっしゃっていることも意味がわからないぐらいのレベルなんです。つまりこのエントリでは、「温暖化が科学的に証明されたぞ」といいたかったんじゃなくて、「温暖化について総意が形成されつつあるんじゃない?」と言いたかったんです。

「資源の枯渇」は「使う側(主に先進国)」にしか影響を与えないが、「気候の変化」は使わない人(主に途上国)にも、資源が枯渇し終わった将来の世代にも影響を与えること、生態系、植生->農漁業への影響など、もっとボラティリティリスクがあるということではないでしょうか。資源の浪費が悪いことやNOXの有害性については、まだ合意形成中の温暖化と違って、一応もう合意があるといってもいいと思います。

ロンボルグについてはおっしゃるとおり経済界では寵児としてもてはやされた感がありますが、科学者ではありませんから科学界ではあまり相手にされていないのでしょう。やたら「環境懐疑」で物議をかもすよりは、専門の「費用便益分析」をいかして、開発援助金の使われ方の研究とかを静かにやっていただきたいなと思っています。
【2007/03/09 10:04】 URL | みーぽん #- [ 編集]


環境省の報告書の水面上昇に関するデータですが、どうもIPCCのものと違うようです。
といっても、私が調べたわけではないのですが、先々週の「たかじんの言って委員会」に出演
していた武田邦彦氏が言っていたのを聞いただけなのですが。
なんでも、IPCCの報告書と環境省の報告書にかなりのずれがあるのを指摘したところ「翻訳ミス」との回答があったとか。
【2007/04/03 09:54】 URL | winter_mute #mQop/nM. [ 編集]

winter_muteさん テレビは鵜呑みにしないで!
IPCCの英語版がこちら 
http://ipcc-wg1.ucar.edu/wg1/docs/WG1AR4_SPM_Approved_05Feb.pdf
環境省による翻訳がこちら
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=9125&hou_id=7993

お時間のあるときに、IPCCの6-7ページと、環境省版の5ページを比べて見てください。唯一の違いは、予測値の上下の幅の書き方を、「3.1mm(2.4~3.8)」とあらわすのか、「3.1±0.7」と書くかぐらいの違いで、数値そのものに違いはありません。

ぜひテレビで聞いたことは鵜呑みにせず、ご自分で見てみてください。
【2007/04/05 11:32】 URL | みーぽん #- [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://miepong.blog81.fc2.com/tb.php/10-c1bc2267
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

田中宇さんの地球温暖化トンデモ学

田中宇の国際ニュース解説:地球温暖化の国際政治学  かなりユニークな国際政治解説だとは思うけれど、もうちょっと基本というか精読すべきというか・・・。 佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン【2007/03/08 08:24】

プロフィール

みーぽん

Author:みーぽん
複数の外資系秘書を経て英語通訳者に転身、2007年に夫の地元カリフォルニア州サンタクルーズに引っ越しました。
2年間こちらで環境金融の会社のアドミ&会計を担当した後、2009年からフリーで通訳・翻訳をしています。
TwitterのIDは@miepongです。



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



リンク



ブログ内検索



RSSフィード



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。