みーぽんBLOG from カリフォルニア
カリフォルニアから時事、政治、環境、日米比較などランダムに綴ります
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宗教の経済思想: アマーティア・センに関心が出た
エジプトの憲法改正のニュース、ご存知ですか?明日はわが身かと背筋が寒くなります。

さて「宗教の経済思想」読んでみました。
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前回読んだ「悪夢の循環」の中で、イラク戦争のひとつの原因として、欧米の資本家たちが中東に本格的に市場経済を持ち込みたいからでは、との推論がなされていたので、イスラムの経済思想にも触れられているし面白いかも、と思ったのでした。

冒頭にウォーレン・バフェットが資産のほとんどをビル・ゲイツの財団に寄付したこと、ビル・ゲイツもビジネスから退いて慈善活動に集中することにしたことを評価し、これが日本人ににはなじみのない、プロテスタント的な価値観から来ているのだとしています。

このトピックについては、日経ビジネスオンラインの「ゲイツやバフェットが愛読する富の福音」に批判的な批評が載っています。(無料でオンラインの読者登録ができますし、面白いエッセイも多いのでお勧めです。)


この記事によると、ゲイツやバフェットは宗教心というよりは、鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーの書いた「富の福音」という本で「お金持ちになることは悪いことじゃない。ただしその富を慈善事業で還元しましょう。」という考え方に影響されたとのことです。

Wikiによれば、カーネギーは「社会進化論 Social Darwinism」の実践者で不平等を是とした、とのことですから、保坂氏はゲイツやバフェットのインタビューなどを読んだ結果書いたというよりは、ちょうど良い例だと思って憶測で書いたのではと思われます。

とりわけキリスト教イスラム教、ヒンズー教関連になると、憶測や「単なる個人的な推論だが、」と断り書きのつく書き方が多くなり、仏教関連だとかなり踏み込んで、内容の深い考察になる、という傾向です。新書だとしても、憶測や推測が多く、理論の展開もあまり筋道が立っていないので、このエントリを読んで下さった方にはあえてお勧めしない本です。

イスラム教についても、「武力による富の収奪」を許していること、「貸し手がリスクをとらない利子は禁止されているが、銀行も存在するし『利潤』は許されている、などとの説明はされていますが、日本の銀行もイスラム金融に参入しようとしている中、いまひとつ踏み込みが浅いように思いました。

この方は「日本人が最近粉飾や汚職で経済倫理に欠ける行動が多いのはなぜか、それを克服するために、先人の思想から学ぼうよ」という問題意識のようですから、あまり経済自体の摩擦には関心がないのかもしれません。そういうわけで、わたしが興味を持った、「宗教思想の違いが、現在のグローバル資本主義が席巻するなかで、どう経済面でのせめぎあいにつながっているのかな」という問題意識にはあまり答えてくれませんでした。

日本での仏教思想の影響についてはかなり細かく考察がされているのですが、「現在の日本の擬似資本主義」に対して、どう大乗仏教が影響したのかは触れられていなくって、正直いって、あまり参考になりませんでした。

ただ、収穫もなかったわけではありません。「経済倫理」については多いに考えさせてもらえたからです。

ひとつは、インド人の経済学者であるアマーティア・センがノーベル経済学賞を受賞したことに触れ、彼が数理経済学でもトップレベルでありながら、経済倫理の問題を明るみに出したことを評価し、その裏にはタゴールの思想、ヒンズー、そして仏教的な価値観が影響しているのではないか、と述べています。そして、センが「市場資本主義は貧困の問題を克服しない」ことを経済学者として論を追って証明しているということでした。

今、スティグリッツの最新本をえいや、えいや、と読みすすめているので、すでに「グローバリズムを公平にする」にはどうするか、というのを学んでいる最中でした。耳にしたことがあっても読んだことのないアマーティア・センにも、挑戦してみようと思いました。

もうひとつ、なんと言っても「そりゃあそうよねえ!」とひざを打ったのは、「日本は稲作を主とする農業国であり、古代神道とは稲作の労働に従事すること自体が聖なる営みであり、聖と俗に境界線がない」という説明でした。古代バビロニアでは肉体労働は下賎なものがするものだという考えがあり、それがイスラムでの農業の軽視、商業の重視につながっているとのことでした。

ところが今の日本では稲作に従事する人は、国民の何%にあたるのでしょうか?今までの日本人の倫理観が、「稲作労働を通じて神々に奉仕し、共同体で協力し、イエを守る」ことにより守られていたとすれば、農村共同体が衰退すると同時に、日本人の倫理観のベース自体がなくなっても当然なわけですよね。

おまけに戦後は欧米から輸入されて、日教組や労働組合が布教した「アカ的な人権思想」に汚染されてしまった。日本会議系の皆様は、たぶんきっと真剣に日本人が日本的な宗教心を失ってしまったら、日本人が中国人や欧米人にのっとられてしまう!ぐらいに思っておられるのでしょう。

わたしはたまたまクリスチャンではありますが、稲作中心の村落共同体ではなく、都市住民が中心の、新しい日本人の倫理の基礎がどこにおかれるべきなのか、という問題は軽々しく無視するわけにはいかないと気づかされました。

世界のどこでも都市化が進む中、土に縛られた共同体の倫理を超え、世界全体を自分の共同体として捉えなおす新しい倫理が必要だ、とわたしは思っています。グローバリズムが伝統的なコミュニティーをどんどん破壊してしまう力を持つ中、いたずらに伝統を固持しようとすることも、すべてを市場の「見えざる手」に任せることも間違っているでしょう。

女性のわたしにとって見れば、伝統的な思想にはは、アフリカやパキスタン、アフガニスタンなどに見られるように、「男女平等」「人権思想」がほとんどない、女性、こども、障害者や弱者にとってつらい環境であるという問題があります。日本だって女性の立場は改善しているといっても、欧米、そして香港やシンガポールに比べてもまだまだです。

伝統的な宗教心を尊重しつつ、伝統的な宗教では低い地位におかれてきた人びとすべて、女性、こども、障害者、経済的弱者などをも包み込む、大きな思想はどこにあるのか、そう考えると、共産党や創価学会が、なぜ叩かれても、叩かれても支持を失わないのか垣間見えてきた気がします。
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テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済

この記事に対するコメント

TBありがとうございました。
貴エントリー、興味深く読ませていただきました。共産党や公明党の方が社会的弱者を必要としている側面もあるのかもしれませんね。
今後とも、よろしくお願いします。
【2007/03/30 00:55】 URL | nizan #3TvBKaPE [ 編集]

nizan様
ご訪問ありがとうございます。コメントをいただけて恐縮です。
>共産党や公明党の方が社会的弱者を必要としている側面も

なるほど、そうともいえますよね。こちらこそこれからもよろしくお願いします。
【2007/03/31 01:29】 URL | みーぽん #- [ 編集]


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プロフィール

みーぽん

Author:みーぽん
複数の外資系秘書を経て英語通訳者に転身、2007年に夫の地元カリフォルニア州サンタクルーズに引っ越しました。
2年間こちらで環境金融の会社のアドミ&会計を担当した後、2009年からフリーで通訳・翻訳をしています。
TwitterのIDは@miepongです。



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