みーぽんBLOG from カリフォルニア
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乱射事件と抗うつ剤の知られざる副作用
【お詫び】以下の記事で「チョ・ヨンヒ」と記してしまいましたが、「チョ・スンヒ」の誤りでした。訂正させていただきます。(4/24)

バージニア工科大乱射事件について、気になっていることがあります。19日付の「アクセスジャーナル」でも触れられていますが、チョ容疑者が「うつ病で治療を受けていた」上、処方薬を飲んでいたことです。

17日付のLAタイムスの記事"Gunman was both methodical and angry"によれば、犯行の当日にも同じ寮の学生がチョが「いつもの通り薬を飲んでいた」とありました。(リンクが消えていたので以下に貼ります)

It was 5:30 Monday morning and Karan Grewal was finishing a break after a long night of cramming for his classes at Virginia Tech. As he left the bathroom at Harper Hall, his dormitory mate, Cho Seung-Hui, wearing boxer shorts and a T-shirt, entered for his morning ritual of applying lotion, inserting his contact lenses and taking his medication.



今回の事件のことを知ったとき、まっさきに思い出したのはコロンバイン高校の事件のことでした。ですから、チョ・スンヒが「うつ病の治療を受けていた」という記事を読み、まっさきに思い出したのもSSRIのことでした。

SSRIとは「選択的セロトニン再取り込み阻害剤」の意味で、欧米では「プロザック」の名で広くうつの治療に使われています。

わたしがはじめてうつ病と殺人の関係について疑問を抱きはじめたのは、川崎市の小学生投げ落とし事件のときでした。犯人がうつの治療を受けていたと聞き、「なぜそれほどの攻撃性が出たんだろう?それならうつじゃなくて境界性人格障害とかの診断間違いじゃなかったのかな?」と思いました。

その後、SSRIの弊害について、こんな本が出ていることも知りました。そしてコロンバイン事件の犯人も強迫神経症の治療のために、ルボックスというSSRIを処方されていたこと、遺族がルボックスのメーカーを訴えたことを知りました。

わたしの経験から言うと、うつの人は気力が出なく、とにかく起き上がることさえできない。「死にたい、死にたい」というけれど、「人を殺す」ような攻撃性は見たことがありません。

しかし、1989年のケンタッキーの乱射事件(犯人は8人の死者を含む20人を撃ってから自殺)の後、犯人が服用していたSSRIフルオキセチンのメーカー、イーライ・リリーが訴えられたことから、SSRIの副作用の情報開示が促進されるようになり、2004年8月には米国ではSSRIの販売にあたって、「不安、動揺、パニック、不眠、イライラ、敵意、攻撃性、衝動性、静座不能、軽躁、躁状態が報告されている」と明記されるようになりました。

わたしは抗うつ剤を「飲むべきでない」とは思いません。わたしの身内も抗うつ剤を長いこと服用しながら、うつと付き合っており、正直言って抗うつ剤抜きの生活は想像がつきません。

薬抜きでは朝寝床から起き上がることもできず、ふつうに家族と会話することも苦痛だといいます。

ただ、うつの調子が良くなってくると、逆に薬で「そわそわする気分」が不快になり、薬をいったんやめてしまうのです。ところが薬をやめてちょっと経つとどーん、とまた落ち込みが訪れる、そのサイクルを繰り返しています。

ですから、薬がいけないというよりは、「どういうタイプの人にはSSRIの副作用のリスクがより高まるのか」という研究が十分になされ、開示がされるべきだと考えます。

ヒーリーのこちらの論文にかなり詳細な情報が載せられています。

これを見ると、パロキセチンというSSRIを販売するグラクソ・スミスの治験でも、偽薬と比較して高い攻撃性の程度があらわれたこと、健康な男女に対する偽薬との比較でも、攻撃性があらわれたことなどが報告されています。

最近になって、イーライ・リリーは開発直後の80年代に、すでに副作用情報を知りながら、意図的に隠蔽してきたこともわかってきました。

ヒーリー博士も言っていますが、最終的には殺人の責任を負うべきなのは本人ですが、投薬によって攻撃性が増すというリスクがもし十分に知られていたら、チョ・スンヒは30人を殺すに至ったでしょうか。

もし、SSRIが処方されている人は銃を買うことができない、という規定があったなら?(銃の所持ライセンスに、定期的に健康診断書を添付させればいいのです。)そして、もしチョ・スンヒが、文学のクラスでここまで攻撃的な文章を書いていることを大学のカウンセリング担当者が知っているのなら、チョの担当医はなぜ抗うつ剤を処方し続けたのか?

わたしはチョが「格差社会の被害者」であるという見方は必ずしも正しくないと思っています。姉がプリンストン、本人もVTという大学への進学が可能だったわけですから、もっと恵まれない人に比べればずっとマシです。

それよりは、東部の白人社会での疎外感、プリンストンに行ったという優秀な姉に親から比べられるプレッシャー(メディアは彼の文章は小学校5,6年生レベルだと評しています)などにより、現実に対する認知が歪んだゆえに、極端な被害者意識を持つようになったのではないかと思っています。

韓国からアメリカに移民する親は、皆子供により良い教育を受けさせたい、そして息子を軍隊に行かせずにすませたいという一心でアメリカに渡ると思います。でも、言葉もろくにわからない土地でクリーニング業を営む中で、息子が孤独を感じていても、悩んでいても、十分に息子に時間を割いてやる余裕はなかったでしょう。むしろ「お姉ちゃんのようにがんばりなさい」と叱咤したのではないでしょうか。息子がカウンセリングを受け、投薬治療を受けていることを知ったとき、どう思ったでしょうか。「これで良くなってくれればいい」と願ったに違いありません。

そんな中で息子を「大量殺人者」のレッテルを貼られた上で失ったチョ・ヨンヒの両親の気持ちを思うと、やりきれない思いでいっぱいです。製薬会社は、利益を失わないために副作用情報を意図的に隠蔽するケースがままあります。しかし、今回の事件でもケンタッキーやコロンバインと同じように、集団訴訟が起こされ、逆に巨額の補償を求められることになるかもしれません。

せめて、銃規制の論議と同時に、SSRIの副作用の認知も広まることを願います。







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テーマ:アメリカ合衆国 - ジャンル:政治・経済

この記事に対するコメント
SSRIの副作用
パキシルの効能(副作用)については身近なところで知っていますが、特に怒りの情動を増幅し、感情を抑えきれなくするくらい激しくする作用があります。それだけにユーザーの広がりが潜在的な事件発生のリスクを確実に増加させているものと確信します。
【2007/04/20 23:50】 URL | ペンギン #- [ 編集]

……私が知っているのは、サリドマイドのことくらいなので……
これ、凄く難しい問題と思ってます。
非常に一般論として、行為(たとえば薬を飲む)と精神状態とには相関があるので、機械に油を注すようには、因果を割り切って説明することができないのではないかと……。
だからこそ、このようなお薬を処方している間は、主治医の厳重な観察下に置かれ、処方の期間も最小限にするはずです。(もっというと、医薬分業が進んだ米国だと、薬剤師が異変に気付いて、ストップすることもあり得るか?)
ある症状が続くものとして処方される薬、は、症状に変化があった場合には街になります……。
この手の取り扱いが難しい薬は、当然、たとえば入院時のみに処方可能等々の注意があるはずで、
またそのような注意事項に関しては、米国の薬事当局はわりに慎重だと聞いていたのですが、種類によるのか、と認識しなおしているところです。

>そんな中で息子を「大量殺人者」のレッテルを貼られた上で失ったチョ・ヨンヒの両親の気持ちを思うと、やりきれない思いでいっぱいです。
この件、ただ一つの救いは、昨日お姉さんがコメントを出すまで、マスコミがこの家庭に強いて責任を求めなかったことですね。
【2007/04/23 21:29】 URL | デルタ #JnoDGgPo [ 編集]

ペンギン様、デルタ様
コメントどうもありがとうございます。
ペンギン様: ユーザーの広がりに見合った、「副作用情報の啓蒙」が必要ですよね。

デルタ様: 「主治医の厳重な観察下」どころか、SSRIは、アメリカでは日本において「抗生物質」を処方してもらうのと同じくらい気軽に処方されているし、すごくポジティブなイメージがあるという印象があります。プロザックなど、バンバンテレビでコマーシャルされています。(アメリカでは処方薬のTVCMがOKなんです、、。怖いですよねー。)だから抗うつ剤を使うことを批判したりすると、(トム・クルーズが産後うつに抗うつ剤を使ったブルック・シールズを批判した)いっせいにバッシングにあったりします。

家族、とか民族全体に責任を着せるという発想は、現在のアメリカではpolicically incorrectになりますもんね。お姉さんの手紙も好意的に受け止められている感じですよね。
【2007/04/24 17:35】 URL | みーぽん #- [ 編集]

私も同感です
初めまして。

かおると申します。アメリカにて、心理学を勉強しています。
日本で、抗うつ剤についての副作用で、殺人が起きる事があるということを
知られているのかどうか知りたくて、検索をかけたところ
こちらにたどり着きました。

この件については、私も全く同じ意見を持っていて、
この事件は、抗うつ剤の副作用なんじゃないかと思っています。
ただ、こちらのメディアも、彼の服用してた薬がAntidepressantかどうかまでは、
きちんと発表していません。シカゴのメディアだけが一社、抗うつ剤と発表してましたが。

そして、抗うつ剤についての認識も全くみーぽんさんと一緒です。
抗うつ剤があってこそ治った方も多いでしょうし、一概に悪者にはできないと
思います。

ただ、こちらで、精神科医で、法医学もやっている方が
テレビに出ていて(法医学ということは、精神科の治療を受けていた人が
犯罪を犯す、という、究極の場面を何度も目にしている方でしょうね)、
その人も「薬に頼りきるな。」と言っていました。

<心>の病だから、薬に頼りきるだけでなく、最後はその人の心次第。
もし使うならば、薬品の効き目は人それぞれなので、常に監視が必要。


と思います。

では失礼します。

かおる
【2007/05/24 07:04】 URL | かおる #- [ 編集]

かおる様
かおる様、コメントどうもありがとうございました。

アメリカで心理学を勉強しておられるのですね。では「プロザック・ネイション」もお読みになったでしょうか。「うつ」が一大産業になっているような気がされませんでしょうか。

アメリカの場合は銃という破壊力の大きな武器が入手しやすいことで、副作用をさらに増幅してしまうというのが恐ろしい側面だと思います。
日本も銃社会になりつつあるので、今後が心配です。
【2007/05/28 16:30】 URL | みーぽん #- [ 編集]


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プロフィール

みーぽん

Author:みーぽん
複数の外資系秘書を経て英語通訳者に転身、2007年に夫の地元カリフォルニア州サンタクルーズに引っ越しました。
2年間こちらで環境金融の会社のアドミ&会計を担当した後、2009年からフリーで通訳・翻訳をしています。
TwitterのIDは@miepongです。



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