みーぽんBLOG from カリフォルニア
カリフォルニアから時事、政治、環境、日米比較などランダムに綴ります
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【書評】:超・格差社会アメリカの真実
超・格差社会アメリカの真実 超・格差社会アメリカの真実
小林 由美 (2006/09/21)
日経BP社
この商品の詳細を見る


かなり話題になった本なので、お読みになった方も多いかもしれません。単純なアメリカ批判本ではなく、歴史、政治、社会とさまざまな側面から、いかにして格差が生まれ、維持されているかわかりやすく分析されています。

そのわかりやすく論理的な文章は、在米26年という小林由美氏が、英語の文章をまず思い浮かべ、日本語に直しつつ書いているせいもあるでしょう。1975年に大学を卒業し、女性として就職のハンディを味わってから、のちに米国にMBA留学した彼女は、先日のエントリに述べた「退出」組の一人と言えます。
アメリカにわたった当時、彼女は「これが自由なんだ」と実感し、生きていて良かった、と身体中で幸福感を感じた、と言います。その実体験から、アメリカの良さについても十分に理解しているわけです。

その後26年を経て、現在の彼女は、民主主義国であるはずのアメリカで、なぜこれほどまでに格差が容認されているのか?そして、アメリカに倣えという風潮が強い日本は、本当にアメリカのようになりたいのか?という問題を提起しています。

私はアメリカ社会の問題点、たとえば軍事偏重であること、マスメディアによる情報の歪曲、企業に支配された政府、医療や教育の貧困などについて、今までもチョムスキーやマイケル・ムーアなどの本や映画からある程度の知識は得てきたつもりでした。

またアメリカ人の夫やその親族・友人を見ていて、成功譚も失敗談も双方見てきました。

そういう意味ではアメリカの富の偏在や中産階級の没落、という話題は特に私にとって目新しいものではありませんでした。

ただし、ではいかにしてこのように格差が形成され、維持されているのかと言う点に関しては、植民地以来の歴史、金儲けが至上の価値観であること、移民によってできあがったゆえの、「社会」の不在(だから社会主義も当然出てこない!)など、本書から得た知識、視点には新鮮な、しかもうなずける点が多くありました。

格差が形成、維持されるにあたって、どんな要素がアメリカに独特なものなのでしょうか。本書で述べられているのはこういった点です。

-アダム・スミスの思想が換骨奪胎され、「神の見えざる手」と「レッセフェール」が、スミスの意思に反して「社会の圧力」や「独占の排除」が欠落した形で導入されたこと
-広大な土地が無償で与えられたので所得の再配分が当初必要なかった
-「建国の父」たちが起草した人権・民主主義思想により、民衆が目覚めてコントロール不能になっては困るので、巧妙にマスメディアが利用されるようになったこと
-福音主義キリスト教&移民による「反教養主義」の伝統
-リスクを恐れず変革を好む移民のDNA
-軍事力を背景に市場を開拓し維持するという政策
-公教育の崩壊による教育の二極分化
-ゲーテッドコミュニティーに代表されるように、階層による棲み分け・隔離により、格差が目に見えにくいこと

このように羅列してみると、アメリカの現状は世界でも稀な特殊な条件によって成り立っていることがわかります。逆に言えば、日本が上で現在当てはまるのは、マスメディアの支配と公教育の崩壊ぐらいであり、アメリカのような国には決してなることがないとわかります。

とくにアメリカに「社会」がない、という指摘は小林氏の慧眼だと思いました。言い換えれば個人に組織に対する帰属意識が薄い、ということでしょうか。組織への「帰属」を超えて、依存しすると同時に、「この組織以外に居場所はない」と思い込みがちな日本人とはまさに対照的です。

そもそもアメリカと日本の格差は内容が違う、と小林氏は言います。アメリカは上位5%の富裕層が国内資産の6割を握っており、金融資産に限れば上位2割が91%所有する。不動産や株価によるキャピタルゲインで生活して行ける人々と、そうでないものの差である。翻って日本の格差は給与収入の格差の問題だ、と小林氏は言います。したがって基礎教育や生涯教育を充実し、上方移動の機会を十分に与えれば、むしろもっと労働力の流動性はあったほうがよいというわけです。これはブレアのニューレーバーの考え方に近いものと思いますが、わたしも基本的には賛成です。

アメリカでは格差の底辺にいる側が、抗議の声を上げることもあまりない、(気づいていないのかもしれない)ので、もはやあまり希望はないが、日本では今行動を始めれば間に合う、というわけです。

彼女の考察を読んでから、「声」を上げて社会の問題に行動を起こさないのは日本女性ばかりの問題かと思っていたが、それはアメリカの大衆も同じなのだと気づきました。ショッパは問題にしませんでしたが、大資本に支配されたマスメディアのある国では、ひとしく問題は巧妙に隠されているからです。

彼女自身の結論は、日本では自由を後回しに、平等が達成されたかもしれないが、今でも逆に精神的な圧力が強まっているように感じる、というものです。(おっしゃるとおり!)

たしかにアメリカの影響で、日本人の自尊心は失われてきたかもしれないが、それを克服するのは、安倍首相が提唱するような、国家に帰属を強制する愛国心によるものではなく、個人の自由の追求がもっと許されるべきだという見方です。

これが日本社会において既得権益を持つ人(たとえば男性)だったら、同じ在米経験でももっと保守的な結論になったかもしれません。よりリベラルな視点であるゆえに、わたしにとってはうなずきやすい結論でした。

最後に、アメリカ発でありながら、もはやグローバルに悪影響が増している点について、私自身が本書から受け取った警告を以下にあげます。

1.実際はフェアであるはずの市場資本主義は、株主利益至上のせいで、インサイダー化、情報の非公開が進み、歪みが進んでいる

2.市場資本主義の限界(環境問題、教育や医療の貧困など)も市場により克服される(バイオエタノール、バウチャー制度、民間医療保険など)という考え方には無理がある

3.マスメディアの支配に対して、民衆の側がメディアリテラシーを高める必要性

アメリカ的な、思想のないマネー至上主義が日本にどこまで浸透するかは別として、わたし自身、マネー(GDP)に換算されない人間の幸福を裏打ちする思想・思索を深めること、それを改めて決意させられた本でした。













スポンサーサイト

テーマ:アメリカ合衆国 - ジャンル:政治・経済

この記事に対するコメント
購入して読んでみるつもりです
分かりやすい記事ありがとうございます。『ワーキング・プア』の関連書として本書を購入するかどうか迷っていましたが、みーぽんさんの記事を読んで、購入することにしました。
読み終えるのはいつになるか?ですが...
> 日本では今行動を始めれば間に合う
...逆に言うと、間に合わなくなると、アメリカ擬似のこの国の形になり得るという危惧は拭えません。
【2007/05/23 19:58】 URL | 10chan #5LQYexZw [ 編集]

10chan様
コメントどうもありがとうございました。
アメリカではようやく最低賃金がアップされるそうですね。「人の振り見て、、」ではありませんが、良い面も悪い面も学んで取捨選択していければいいですよね。

【2007/05/28 12:54】 URL | みーぽん #- [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://miepong.blog81.fc2.com/tb.php/27-e0803f74
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

「うまい、はやい、やすい」三拍子揃ったブログ になりたい^^

参院選まで「読む前に押す?作戦」継続中! 「あいよっ」って感じでクリックお願いします人気ブログランキング  ※より多くの人に伝えるために・・・政治や時事の事を書き出して1年ちょっと。ようやく自分の居場所? らんきーブログ【2007/05/18 12:29】

頑張って、岩国!

昨日「岩国市新庁舎募金の会 “風”」さんからいただいたTBでサイトに飛んでいくと、国が約束を反故にして完成が危ぶまれていた岩国市の新庁舎建設に対して、有志が募金活動を始めていました。 そうだ、この手があ とむ丸の夢【2007/05/18 17:19】

このところあほ晋三の暴挙が目立つ

このところ、沖縄に自衛隊を送ったり、国民投票法案を無理やり成立させたり、あほ晋三の暴挙が目立つが、辞任を前にやけっぱちになっているに違いない(笑)。アホはアホらしくおとなしくさせておけばいいものを、キチガイ カナダde日本語【2007/05/18 23:47】

親と子に必要なものは

「親学」は必要か、の見出しが目についたのは、21日月曜日の毎日。「夜回り先生」こと水谷修さんと、元ヤンキー、現教育再生会議担当室長の義家弘介氏の顔がそこにありました。2人のそれぞれの人生を刻んだ顔。 親に子育てに関 とむ丸の夢【2007/05/23 16:18】

ローマ帝国の衰亡を思い出す

人工樂園さんからのTBで、25日に行われたという下関市の戦時訓練を知りました。 驚いて下関の友人に電話をしましたがちょっとつかまらず、この件はお預け。 六連島は、潮の速い関門海峡で、水先案内を受けるまで停泊する小さな島 とむ丸の夢【2007/05/27 14:36】

お役所文書がどんどん捨てられていく

松岡大臣の自殺については、疑念を抱く人が結構いるようですね。 かくいう私も、午後のニュースで知ったとき、まず自殺を疑いましたし、早く辞めさせてもらえていたら、死なずにすんだかもしれないのに、と思いました。  とむ丸の夢【2007/05/29 08:47】

超・格差社会アメリカの真実

み~ぽんさんのお勧め(?)で、本書を読み終えた。み~ぽんさんの書評はコチラ⇒ht 10ちゃん心【2007/07/09 00:16】

プロフィール

みーぽん

Author:みーぽん
複数の外資系秘書を経て英語通訳者に転身、2007年に夫の地元カリフォルニア州サンタクルーズに引っ越しました。
2年間こちらで環境金融の会社のアドミ&会計を担当した後、2009年からフリーで通訳・翻訳をしています。
TwitterのIDは@miepongです。



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



リンク



ブログ内検索



RSSフィード



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。